愛してやまない音楽を
サークルの引退ライブがあった。
アルコールとニコチンとゲロにまみれた最高のライブだった。
後輩たちの踊り狂う姿や、同期が歌う懐かしの歌、先輩たちの盛り上げようとする姿が愛しかった。
音楽を愛する仲間たちが、色々な思いを歌に、ギターに乗せて吐き出す姿はどうしても感動した。
最高に面白くておかしくて楽しいライブだったけど、いつだって気を抜いてしまえば涙がこぼれそうになった。
10代の頃からいっしょにこのサークルで音楽を愛してきた。
笑いあったり、許しあったりしながら僕たちはいつのまにか22歳になった。
22歳といえば年齢的には立派な大人だ。
僕たちは一緒に大人になった。
大人になればそれぞれ自分なりの価値観が定まってくる。
僕は20歳を終えたあたりから価値観の合わない人間と仲良くすることができなくなった。
きっと僕だけではないはずだ。
小学生の頃、となりの家に住んでいるというだけの理由で朝から晩まで遊んだ友達がきっといると思う。
でも大人になった今、となりの家に住んでいるという理由だけでは友達になることなんてできなくなった。
近くにいるということは、気があうこととはなんら関係ないからだ。
小さな頃にとりあえず近くにいる友達と遊んでいたのは、気があうも何もなく、ただ自分なりの価値観が定まっておらず、価値観どうしが衝突することがなかったからだと思う。
価値観の違いは生き方の違いであり、宗教の違いだ。
でも僕たちは一緒に大人になった。
価値観を作り上げる人生において大事な時期に一緒にいた。
だから僕たちはきっと同じような価値観を持っている。
特に楽しいと思えること、大事だと思えることについて。
もう気軽には会えなくなってしまうけど、いつか会えたらきっと楽しい時間を過ごすことができるはずだ。
同じポイントで笑えると信じている。
僕たちはもうすぐ社会に出る。
これから出会う人たちはそれぞれがそれぞれの価値観を作り上げてきた大人達だ。
もう気の合う友達なんて二度とできないかもしれない。
そんな不安を抱えてしまう今の時期に、似たような価値観を持つ友達が10人もいることがどれほど心強いか、どれほど心を軽くするかやっと分かるようになった。
中学生の時、周りに音楽の趣味の合う友達なんていなかったから、いつだって音楽を聞いてる時は一人ぼっちだった。
でも気づけばただ音楽を好きでいたことが10人の大切な友人を得ることにつながった。
あの頃の自分には想像もつかないだろう。
夜中にスネアを打ち鳴らしながら走り回ったこと。
ボクシング部の部室に忍び込んでサンドバックを殴りまくったこと。
ギャンブルで財布を空にしてヘラヘラ笑いあったこと。
音楽をするためだけに4泊もしたこと。
どれも僕の今を作り上げる大事な思い出だ。
そして、
大きな声で自分の好きな歌を歌うことを許してくれる友達が出来たこと。
傷つけ合うことなく、ぶつかることのできる友達が出来たこと。
忘れたくない思い出を共有する友達が出来たこと。
サークルに所属するすべてのメンバー、そしてなにより愛してやまない音楽のおかげだと思ってます。
今まで本当にお世話になりました。
いつかまた会って楽しく音楽をしましょう。
愛してやまない音楽をどこまでも鳴らそうぜ兄弟。