君が誰かの彼女になりくさっても
奇妙礼太郎トラベルスイング楽団の『君が誰かの彼女になりくさっても』という曲のライブ映像を見た。
バンド名が長いから奇妙礼太郎楽団って書くけど、奇妙礼太郎楽団は奇妙礼太郎という変な名前のおじさんがボーカルのバンドでバックに管楽器、鍵盤、パーカッションなどのさまざまな楽器がある大きなバンド。
もともとはロックバンドをやっていた人だから歌い方がロックで楽器達はジャズっぽい編成だから、そんなバンドがポップスをやっていてとても面白い。
奇妙礼太郎の絡むバンドって結構ややこしくて、『君が誰かの〜』は僕の知ってるだけで天才バンド、ワンダフルボーイズ、奇妙礼太郎楽団の3つのバンドが演奏してたと思う。
で、誰が作った曲かというと奇妙礼太郎ではなくて天才バンドのベース、キーボード担当のsundayカミデという人らしい。
ややこしくてめんど臭いから説明はこれくらいにしといてライブ映像の話に入る。
どうやらお客さんが客席の最前列で撮った映像のようで画質も音質もあんまり良くない。
岡山でのライブらしい。
その映像はライブの最後の一曲が始まる少し前のMCから始まっていて奇妙礼太郎がひどい下ネタを言い散らかしてから『君が誰かの〜』の演奏が始まる。
「バンドメンバーに大きな拍手を、みなさんにも大きな拍手を、そしてこの夜に一番大きな拍手を」
そう言ってから奇妙礼太郎が歌い出す。
ずっとずっと君が好き
誰かの彼女になりくさっても
力強いのに優しくて、乱暴なようで繊細な歌声がバックのたくさんの楽器達と合わさって、ハーモニーとはこのことかって思わされる。
Aメロを半分歌い終えたところで奇妙礼太郎の指示で照明が全て消される。
真っ暗でステージは何も見えなくなるが、ここでもしょうもない下ネタを言ってお客さんを笑わせている。
もう君の髪には触れられないよ
夜中の電話もできないよ
今頃どうしてるかな
優しい人に出会えたかな
この曲は歌詞がとても良い。
曲を作ったsundyカミデは本当にあったことしか歌詞にしないらしく、そのせいかぐっとくるようなロマンチックなフレーズは出てこないんだけど全体を通して、頭のどこにもぶつからずに聞いた瞬間にすぐに心の一部になってしまうような歌詞になっている。
奇妙礼太郎が照明を消させた理由が分かるような気がする。
この曲を聞いていると今までの記憶が映像となり頭の中で流れる。
失恋ソングなんだけど不思議と悲しい気持ちにはならなくて、むしろ懐かしくて優しくて暖かい気持ちになる。
小さい頃に大好きだった映画をこの歳になってから久しぶりに見た時の気持ちみたいな。
サビになるとバックの演奏の音圧が一気に上がる。
それに答えるように奇妙礼太郎も熱唱する。
ずっとずっと君が好き
今頃誰かと暮らしてても
熱唱ってただ声を張り上げることじゃなく、ただ顔を歪めるて歌うことでもなくて歌詞に対して自分の思いをぶつけることなんだと気付かされる。
1番のサビが終わると短い間奏があってそこで奇妙礼太郎が短くお客さんに感謝を述べる。
そしてひと息つく間もなくサビの熱量を保ったまま2番が始まる。
ここからはもうあんまり言うことがない。
でもそれは言いたいことがないわけじゃなくて感動を上手く言葉にできないってこと。
ただ1番以上に素晴らしいってことだけ書いとく。
残念なことに奇妙礼太郎楽団は2年前に解散してしまっているらしい。
僕はこの曲しか知らないんだけどライブに行きたかった。
暗くなった会場で演奏に浸りたかったし、下ネタばかりのMCで笑いたかった。
ともあれ今はこの映像に出会えたことを嬉しく思う。
毎日は見ないけど、ふと思い出した時に見ようと思う。
もう1つ奇妙礼太郎楽団が『君が誰かの〜』を演奏しているライブ映像が動画サイトにある。
そっちはちゃんとカメラマンが撮っているしちゃんとした録音がされているから見やすくて聞きやすいんだけど僕はこの文章で書いた映像の方が好きだ。