居酒屋の隅っこから

 

今日はサークルの同期数人で飲んだ。

明日から夏休みだからとりあえず半年お疲れって意味で、安い居酒屋にいってその中でも安いメニューを頼んで乾杯した。

大学の近くの居酒屋だからテスト終わりの20人くらいの学生の団体がいて店内はすごく騒がしかった。

僕らは4年生だからテストは少ししかないし、そもそも授業が少ししかないから開放感はそんなになくて、あんまり盛り上がることもせず隅っこのテーブルでゆっくり飲んだ。

学生の団体は店の真ん中に陣取って大盛り上がりだった。

 

僕たちも1.2年前までは彼らのように大声を出して酒をガバガバ飲んでいたはずなのにいったい、いつの間に彼らを遠目で見るような存在になったのかを考えてしまった。

 

この居酒屋の様子は大学生活の縮図みたいだなって思う。

 

居酒屋の中心には大学生活を最高に楽しんでいる人達がいて、隅っこには僕たちみたいにあんまり大学生活を楽しんでいるとは言えない人達がいる。

そして半年後に卒業してしまえばこの居酒屋に僕たちの居場所はない。

 

フランスの哲学者のサルトルの言葉にこんなものがある、
『青春とは、奇妙なものだ。外部は赤く輝いているが、内部ではなにも感じられないのだ。』

 

まったくその通りだと思った。

1.2年前は僕らも居酒屋の中心にいたけど、少しづつ少しづつ中心から隅に移動して、きっともう少しで店の外に押し出されてしまうんだ。

 

また居酒屋の中心に戻りたいって思うけど、それはやっぱりもう無理だと思う。

今の僕らにとって梅酒のロックは罰ゲーム用じゃないし、トイレは用をたすところで嘔吐するところじゃないし、二日酔いは辛いってことを4年間ですっかり学んでしまっている。

お酒というものが楽しむためのツールではなく、ただ集まるための口実でしかない。

そんな僕らは赤く輝く彼らを外部から見ることしか出来ないのだ。

 

そう思うと少しだけ辛かったけど、別に今日の飲み会がつまらなかったわけではなくて、それなりに楽しかった。

たくさん笑ったし、聞いて欲しかったことを話せたし、なにより僕だけじゃなくて同期と一緒に隅っこに座れた。

半年後に僕がこの居酒屋から居場所を失うときは彼らも一緒だって思えたのが心強かった。

 

僕らは飲み放題のオーダストップがかかる前にお会計を済ませて店を出た。

店を出るときになるべくたくさん店内の空気を吸った。

どうしても少しだけ今までの大学生活を想った。