最高のパンチライン

 

hip-hop用語でパンチラインという言葉がある。

とくにフリースタイルバトルなんかで用いられることが多い。

フリースタイルバトルとはその名の通りDJが流すビートに自由に乗ってラップでバトルすることだ。

ここ1年くらいでフリースタイルダンジョンという番組が大流行しているから知っている人は多いと思う。

 

そしてパンチラインとは本来はオチ、インパクト、印象に残る部分、という意味らしい。

要は決め台詞やグッとくる言い回しのことで、バトル中にうまくパンチラインが決まればそれだけで勝敗が決まってしまうくらい重要なものだ。

 

呂布カルマというラッパーがいる。

パンチラインの代名詞とも言えるラッパーだ。

例としてそんな呂布カルマのパンチラインを紹介する。

 

これがボクシングならありえねえ

言葉のウェイトに差がありすぎる

お前ん家にあるだろ俺のCD

お前ん家でいつもラップしてるやつがここにいるぜ?

 

フリースタイルバトルはよりヤバいことを言った方が勝ちというヤバいルールだから、こんなことを言われたら対戦相手も観客もひとたまりもないんじゃないかな。

 

パンチラインは映画や音楽にも存在する。

有名なのは『カサブランカ』という映画で主人公であるハンフリー・ボガードの「君の瞳に乾杯」というセリフだろう。

個人的に好きなのは主人公を訪ねてきた女性を冷たくあしらうシーンのセリフだ。

 

「昨夜はどこにいたの?」
「そんな昔のことは忘れた。」
「今夜は会ってくれるの?」
「そんな先のことは分からないさ。」

しびれるくらいカッコイイから真似したいと思うけど僕が真似したら女性側からものすごい反感を買いそうだからぐっと我慢している。

 

あと思いつくのはターミネーターの「I'll be back」とか、燃えよドラゴンの「考えるな感じろ」とかかな。

 

映画のパンチラインはそれまでのストーリーや映像があるからシンプルなものが多い気がする。

 

ラップバトルや映画や音楽などの様々な作品の中で僕が最も最強だと思うパンチラインは「A Whole New World」の歌い出しだ。

映画『アラジン』の主題歌で、いつもお城の中にいるジャスミンをアラジンが魔法の絨毯に乗せて外の世界を見せてあげるシーンで流れる。

 

I can show you the world

世界を見せてあげよう。

 

僕たちがライブにいったりディズニーランドに行ったり映画を楽しむのはそれが非日常だからだ。

日常ってやっぱり退屈だ。

吉本バナナは日常を細分化して普段見落としている小さな幸せを見つける大切さを描く僕の大好きな作家だけど、それではやっぱり少し物足りない。

YUKIは『JOY』の中で

死ぬまでドキドキしたいわ

死ぬまでワクワクしたいわ

って歌ってて、それは僕らの切実な願いの代弁に他ならなくて、そんなドキドキワクワクする非日常を僕らは心から欲しているのだ。

 

初めて友達と酒を酌み交わした日をよく覚えているし、初めてクラブに行った夜をよく覚えている。

そんな非日常をよく覚えている。

 

アラジンはお城の中で退屈に過ごすジャスミンの日常にドキドキワクワクするような全く新しい世界、つまり非日常を与えた。

やっぱり「I can show you the world」は最強のパンチラインで最強の口説き文句だ。

こんなセリフを言われたら手を取る以外の選択肢はないし、目をつぶる理由はどこにもない。

 

アラジンのような存在に出会いたいと思うし、アラジンのような存在になりたいと思う。

魔法の絨毯に乗って世界を旅して、好きな女の子に最高のパンチラインをお見舞いしてやれるような存在に。

 

 

最後にはきっと僕こそがラブマシーン

君にずっと捧げるよファンタジー

ブギーバット、シェイクイットアップ神様がくれた

甘い甘いミルク&ハニー

小沢健二 featuring スチャダラパー今夜はブギー・バック