読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

銀色の夢に沈む夜 きみは僕だけのビューティー

 

4月17日は僕にとって20番目くらいに大事な日だ。

大学で初めて好きになった子の誕生日だ。
 その子とは大学1年の入学直後に出会った。
 
彼女は隣の大学に通っていたが、僕の大学のサークルに参加していた。
僕たちはお互い全くと言っていいほどサークルに馴染むことができず、次第にサークルには参加しなくなり2人で映画を見たり、彼女の家の近くのサイゼリアで安いご飯を食べたりして、高校生のカップルのように遊んでいた。
 
大学1年の4月に出会って1ヶ月もしない間に僕たちは仲良くなった。
僕は彼女が大好きだった。僕の大学人生で一番のルックスの持ち主で、富山弁まじりの毒気のない喋り方をし、華奢な体にGUで買ったというパーカーがよく似合っていた。
 
僕たちは恋人ではなかった。
彼女には高校二年から付き合っている彼氏が東京にいたのだ。
 
でもどうしても僕は彼女の恋人になりたかった。
彼女にとって僕は友達以上の存在であることは間違いなかったが、ただ東京の彼氏に会えない寂しさを埋めるためだけの男だったのだろう。
まだ純粋過ぎた10代の僕は自分の立場に途方も無い困惑を覚えていた。
 
そんな中途半端な関係のまま大学生活はじめての夏休みが訪れた。
僕は彼女に会いたくてしょうがなかった。
しかし彼女は彼氏の家に2週間滞在すると言って東京に行ってしまった。
思春期を抜けきらない僕は彼女と東京男のセクシャルな日々を想像してはセンチメンタルに溺れていた。
 
その2週間のダメージがでか過ぎた僕はしだいに彼女と会うことを控え、連絡もあまり返さなくなり季節が変わる頃には完全に関係が途絶えた。
 
ここまで読むと彼女が性悪女みたいに思えるかもしれないけど決してそうではない。
彼女はいつも優しくて、真面目で、決して汚い言葉を使わない僕にとって天使みたいな女の子だった。
 
それから3年経ったいま、そんなことはすっかり忘れてしまっていたが、iPhone のスケジュール管理アプリが今日は彼女の誕生日であることを教えてくれた。
富山から出てきた18歳の少女は名古屋で22歳の女性になったらしい。
 
僕がはじめて彼女の家に行くきっかけになった猫はまだ元気にしているか、一緒に見に行ったオーケストラで僕が寝てしまったことをまだ怒っているのか、サイゼリアのワイン以外のお酒を飲むようになったのか。
 
まだ東京の彼氏とはうまくいっているのか。
 
彼女にあっていろんな話をしたいけどもう無理そうだ。
 
彼女はタバコとチャラチャラした人が嫌いだった。
僕は3年間でタバコを覚えてチャラチャラ遊ぶことを覚えた。
 
そしてなにより彼女は僕のことを優しい人だと言ってくたのに、僕は優しい人ではなくなってしまった。
 
NUMBER GIRL向井秀徳が「女の子を好きになるって言うのは、女の子は天使だって理想を押し付けているだけだ」的なことを言っていたような気がする。
 
女は天使なんかじゃない、女に高望みするなってことが言いたかったんだと思う。
僕もそう思うよ。
でもあの子だけは特別だ。
もう2度と会うことはないと思うけどいつまで経っても僕の天使だ。
 
今更こんな文書を書くのは女々し過ぎて我ながら気持ち悪いとは思うけど全世界に発信してやる。
 
お誕生日おめでとう。
 
今日僕の天使が22歳になったよ。